池田信夫 blog

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「聖なる汚物」としてのコロナウイルス

きょうも東京では新型コロナの感染者が243人出たと騒いでいるが、コロナウイルスを見た人はいない。圧倒的多数の人々にとってはそれは想像上の危険でしかないが、それをこれほど多くの人が恐れるのは興味深い。 感染症が病原体によって起こるとわかったのは150年ぐらい前である。それまでは疫病の正体は見えないので、死体や排泄物は汚物として日常生活から排除された。汚物は両義的な意味をもち、聖なるシンボルとして儀礼で重要な役割を果たす。本書は1966年に書かれた文化人類学の古典である。 たとえば葬儀に糞尿を使う慣習は未開社会に広く見られる。葬式の前後には、性的なタブーも解除される。こういう慣習は現代にも残っており、ニューオーリンズでジャズが生まれたのは、墓地に隣接する売春街だった。日本でも、吉原の遊郭は鶯谷の墓地に隣接していた。死や性などのタブーにふれることで人は日常の抑圧から解放され、秩序をリセットするのだ。...

新型コロナは「武漢ウイルス」ではなく「イタリアウイルス」だった

東京で7月9日に、新規感染者が224人確認された。まだPCR検査は増えているので、しばらくこれぐらいのペースが続くだろうが、この程度の感染者数の増減は大した問題ではない。100人が200人になっても、次の図のようにアメリカの新規感染者5万人に比べれば誤差の範囲だ。大事な...

疫病が近代社会の「生権力」をつくった

コロナで全世界に起こったロックダウンや自粛にからんで、フーコーがよく引き合いに出される。近代社会は「一望監視」システムによる監視社会だというのは1975年の『監獄の誕生』で出てくる概念だが、本書(1977年の講義)では撤回している。一望監視は最も古い主権者の見る最も古い夢だともいえます。私の臣民は誰も逃れてはならない、私のいかなる臣民のいかなる身振りも私の知らぬところであってはならないという夢です。[…]それに対して今や登場するのは、正確には個人的現象ではないような特有の現象を統治(および統治者たち)にとって適切なものとするメカニズムの総体です。(本書81ページ)一望監視装置は君主の見る夢で、現実には存在しなかった。現実に古代の君主権力が行ったのは、疫病患者の排除だった。それが適用されたのが癩病(ハンセン病)で、ここでは患者は家族からも国家からも完全に隔離される。...

環境原理主義の「偽の黙示録」が貧困と格差を生む

新型コロナの騒ぎをみると、ゼロリスク神話の根強さを痛感する。これは地球環境問題ではもっと大きく、グレタ・トゥーンベリの「人類は絶滅の危機に瀕している」といった終末論が、政府や国際機関に大きな影響を与えるようになった。 著者は環境保護派だが、環境原理主義に反対し、原子力に賛成している。本書もその立場から年来の主張をまとめたもので、主なポイントは次のようなものだ。地球の平均気温は上がっているが、異常気象は増えていない先進国では炭素排出量が減少している2003年以降、火災は世界中で25%減少している世界の食糧生産は需要より25%多く、余剰は増え続ける生物の大量絶滅は起こっていないいま敵視されているプラスチックは自然破壊を減らした。たとえば50年ぐらい前まで、ビリヤードの玉やピアノのキーは象牙でつくられ、日本では海亀の甲羅で櫛やボタンがつくられていたが、今はなくなった。象や海亀の絶滅が止まったのは、それがプラスチックで代替されたからだ。...

プラスチックごみはリサイクルしないで燃やせばいい

7月1日からスーパーやコンビニのレジ袋が有料化されたが、これは世界の流れに逆行している。プラスチックのレジ袋を禁止していたアメリカのカリフォルニア州は、4月からレジ袋を解禁した。「マイバッグ」を使い回すと、ウイルスに感染するおそれがあるからだ。レジ袋を禁止していた世界各国でも、解禁の動きが広がっている。 そんな時期に、わざわざレジ袋を有料化する目的は何だろうか。経済産業省のウェブサイトによると「廃棄物・資源制約、海洋プラスチックごみ問題、地球温暖化を防ぐためにプラスチックの過剰な使用を抑制」することが目的だと書いてある。 まずレジ袋をなくすと、どれぐらい資源が節約できるだろうか。日本で消費される原油のうち、プラスチックの生産に使われるのは2.7%で、レジ袋に使われるのはその2.2%、つまり原油の0.05%である。これをゼロにしても、資源の節約にはならない。...

黒人はなぜ隔離されるようになったのか

Black Lives Matterは日本人には無縁の騒ぎだが、アメリカ社会の恥部にふれる問題である。資本主義を生んだのは産業革命でもプロテスタントの倫理でもなく、植民地支配と奴隷貿易だった。それが英米人の原罪であり、彼らは永遠に許されない。 その黒歴史の中で、感染症は重...

日経新聞があおる「第二波で入院患者9.5万人」の恐怖

東京で新規感染者が50人を超え、新型コロナの「第二波」が話題を呼んでいる。中でも突出して恐怖をあおっているのが日本経済新聞だ。きのうの記事では、「病床不足、最大6.5万床の恐れ 感染第2波への備えに不安」と書いている。 現状では3万138人分のベッドが確保できる予定だが、それでは「ピーク時には各都道府県の単純合計で最大9万5千人が入院する。現状のままでは6万5千人分が不足する計算だ」というが、これは一体どういう計算なのか。続きはアゴラで。

進化論って何?

朝日新聞がまた自民党の広報マンガを批判しています。今度は人間行動進化学会が反対声明を出したというのですが、この記事ではこんな子供向けの一問一答がついています。Q キリンは高い木の葉を食べられるように進化した、というのは正しい? A 「○○のために進化した」という表現も誤りだ。生物の進化は、生物が何かを意図して行うものではない。世代を重ねる中で結果として起きる現象だ。アニメのキャラが変身して強くなることや、スポーツ選手のパワーアップ、製品の性能向上なども「進化」と表現されるけど、生物の進化とは関係ない。 これはまちがいです。続きはアゴラで。

イエスは「社会的隔離」を否定した

新型コロナの死者は累計で50万人を超えたが、これは毎年100万人以上が死んでいる結核やマラリアなどに比べれば、史上最大の疫病というわけではない。疫病は人類の最大の脅威であり、その正体は19世紀末までわからなかったので、病人を隔離する「社会的隔離」が共同体を守る唯一の手段だった。この点では現代も古代とあまり変わらない。 医療は病人を安静にして回復を祈ることぐらいしかできなかったので、医師と呪術師に本質的な区別はなかった。その意味でイエスは医師だった、と本書はいう。福音書に数多く描かれているイエスが病人を癒やしたという奇蹟物語は、キリスト教会では「ご利益宗教」として軽視されているが、むしろそこにイエスの特色がある。 それまでの預言者が「神の国」の到来を告げて権力を批判したのに対して、イエスは民衆の中に入って病人を救済した。もちろん現代的な意味で治療したわけではないが、家族から隔離された病人に「家族のもとに帰ってよい」という帰還命令を出すのがイエスの特徴だった。そして彼のもとに一人の癩病人が来る。彼に頼んで、膝まづき、言う、「もしもお望みなら、あなたは私を清めることがおできになります」。彼は怒って、手をのばしてその男にさわり、言う、「望...

「8割おじさん」は本当は「1%おじさん」だった

アメリカの新型コロナ感染者は累計250万人を超え、毎日3万6000人以上増えている。東京では感染者が毎日50人になったと騒いでいるが、これは桁違いだ。陽性が増えた最大の原因はPCR検査を増やしたことで、検査を増やせば感染者はいくらでも増える。国際比較できる数字は死者である。 各国の累計死者数(FT.com) 累計でみると日本の死者は971人で、アメリカ(11万8000人)の1/120。線形目盛でみると、図のように日本は横軸に埋もれて見えない。日本のコロナ騒動で盲点になっていたのは、このように感染者の絶対数が圧倒的に少ないことだ。続きはアゴラで。

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